赤ひげ会のブログ

タイ東北地方で活動しているアジア子ども教育センター(ACEC)の支援を行っています

【記録の蓄積①】インタビュー「学ぶって何だろう」 2011年12月6日

ACECに関する情報(過去、そしてこれから。関係するものなら些細な事でも)を当ブログに集約させます。ACECを「知る人ぞ知る団体」からの脱却を目指すために、とにかく情報を纏めていきます。日本国内においてACECの情報を管理する場所として機能させていく事を目指しコツコツ作業していきます。題して「記録の蓄積」。第一回は2011年12月6日(火)に行われたインタビュー「学ぶって何だろう?」(当時発行された資料より。内容等は当時のまま加筆等は一切行わないで掲出)

 

2011年12月6日(火) 千葉県鴨川市 鴨川グランドタワーにて

午後17:30~19:30

 

出席者

①ニッタヤー アンシラー ACECアジア子ども教育センター コンケーン事務所副所長 教育関連プロジェクト責任者

 

②パンヨー チャイヨータ ACECコンケーン事務所専属職員 教育関連プロジェクト担当 元タイ政府地域開発省事務官 地域開発NGO職員 出家僧侶経験者

 

③杉浦 直樹                      ACECアジア子ども教育センター主宰 コンケーン事務所所長

 

④杉浦 浩子       直樹氏婦人 元タイ国立コンケーン大学人文社会学部日本語学科教員

 

⑤元岡 蓉子       NGO 花無心代表 ACEC支援者

 

⑥河崎 早弥加      マネージャー兼カメラマン 拓殖大学国際学部赤石ゼミ卒業生

 

⑦五味 雅彦       ACEC荒川支援会 事務局長 森の寺子屋主宰 招聘事業責任者

 

以下の三つの質問に対し、杉浦直樹氏の通訳により、ニッタヤー氏とパンヨー氏がインタビューに答えていただきました。聞き取った内容を五味がまとめてみました。

 

質問1「あなたにとって、学ぶとは何ですか?」

 

ニッタヤー氏

 「学ぶ」には三つの段階があると思います。まず第一段階では、知識や基礎基本となる教育を学ぶこと。そしてまた、日常のしべてがまた「学び」であり、風景や景色からも学ぶことができます。

 第二段階は、日常をしっかりと見ること。しっかり見ていれば、自分を見つめて高めて、心を開発していくことができます。これが第二ステップ。

 第三段階。自分が学んできたことを通じて、「人に必ず還元すること」「救いの手を身につけること」これが最も大切な「学び」であると考えます。

 

パンヨー氏

 学びに終わりはありません。終生続くのが学びです。タイ仏教の僧侶には227の戒律があります。これをすべて日常で守ることは不可能です。

 しかし、最低五つの戒律を守ることで、一般人も十分に学ぶことができます。「殺生をしないこと。嘘をつかないこと。盗みをしないこと。酒に溺れないこと。男女関係が乱れないこと。」

 わずか五つですが意外と難しいことです。日常生活で戒律を意識することは、「人生の学び」に通ずるのです。

 

 

質問2「現状から見て、越えたい壁、乗り越えたい壁が何かありますか?」

 

ニッタヤー氏

 ACECの仕事に問題はありません。仕事に対して幸せを感じています。一番良い仕事をさせていただいております。人生をかけることができる仕事です。

 なによりも、同じ視線、目線で仕事ができるのがとてもうれしく、また大切だと感じています。

 

パンヨー氏

 タイ人の元同僚たちの中には、「政府、地域、仏門という豊富で高いキャリアと経験のある方なのに、なぜそんな小さな民間団体の職員をつづけているのか」という人もいます。

 ACECは私にとって、生涯つづけていきたい仕事なのです。私はずっと、教育に関する「草の根の仕事」がしたいのです。

 今後は特に、北タイの山岳民族の苦しい生活の状況に対して、同じ立場から支援の仕事をしていきたいのです。

 

ニッタヤー氏

 ACECが100パーセント!「出会いが人生の中で最高のもの」です。ACECの仕事が、そのすべてを私にもたらしてくれています。

 

パンヨー氏

 ACECの最も素晴らしいところは「自分たちで考えて仕事ができること」です。主宰の杉浦さんは、「こまかい規則や会則はいらない。教育に限らず、正直であること。誠意と人助け。このことさえ守っていれば、あとは何をやってもいいよ」と言ってくれます。私たちを信頼して任せてくれるのです。

 こんな仕事は他にあり得ません。

 

質問3「将来実現してみたいヴィジョン、壁の先にひろがる世界は、どんな様子ですか?」

 

ニッタヤー氏

 現在40歳になりました。今後年齢を重ねていけば、今のようにあちこち巡回することができなくなります。自分が見て、良いと思える村には、本や絵本を置いて活用してもらいたいと考えています。

 また、「奨学金」を今後はきちんと力を注いでいきたいと考えています。タイで現在よく見かける奨学金は、勉強の良くできるこどもに贈られています。奨学金を受ける条件として、将来は外国企業に就職が決められていたり、国益に還元することが義務になっている場合もあります。

 数値ではかられた成績の子どもでは、本当の国益にはならないのです。

 残念ながら、勉強のできるこどもは、自分にしか関心のない子が多いのです。多くの場合、途中でうやむやになってしまってそれっきり、というケースが少なくありません。私から見て奨学金を贈りたい子どもとは、「親の手伝いをきちんとできる子、誠意のある良い子」です。そんな子どもたちを育てることで「親と社会を変えていくことができる」と信じています。

 人間的に良い子どもを支援すれば、人々への助けもする人が育つのです。必ず社会のためになるのです。私のいう「良い子ども」には、奨学金が贈られることはありません。だからそういう子どもにこそ贈られる奨学金制度を、きちんとつくりたいのです。

 ACECでは今まで23人への奨学金を行ってきました。自分たちの目で実際に見守りながら続けてきているので、この仕組みを充実発展させていきたいと考えています。

 

パンヨー氏

 歳を重ねるほどに、遠くへは行けなくなります。サコンナコン県やペチャブン県など、まだまだ支援を必要としている地域がたくさんあります。

 今後考えたいのは、私たちの活動と精神を受け継いでくれる人、引き継いでくれる人の「人材育成」です。教育技術や精神を受け継ぐ人を育てること、これが大事な課題です。

 長年、さまざまな地域の学校の先生を対象に、啓蒙活動を行っていますが、残念ながら啓蒙啓発に足る人材は見つかりません。

 

ニッタヤー氏

 今までにも、見込みのある子どもを何年間か見守ってきたけれど、青年、若者になると脇道にそれてしまったり、誘惑に流されてしまうことが多く、なかなか跡継ぎが見つからないのです。「人材育成」が最大の課題です。

 

パンヨー氏

 自分たちの技術と精神を受け継ぐ「人の人間開発」のしくみをつくっていきたいのです。

 

両氏

 日本の皆様、どうぞ今後ともACECの活動に、ご理解とご協力、ご支援をお願いいたします。

 

最後に主宰の杉浦直樹氏に「今後のACECをどうしたいですか?」と質問しました。

 

杉浦氏

 二人には、教育を通じて、誠意をもって助けを求めている人に「布施と慈悲の精神」を持って仕事を続けてほしいと思います。

 そもそもACECは、私が蒔いた種です。私が生きているかぎりは、二人は私が責任をもって「食わせていく」覚悟はできています。

 常に大切なのは「自分ありき」です。自己開発、自己啓発の継続こそ学びなのです。自分を見つめ、自分を知り、自分を高める。自分を高めていけば、必ず人を助けることになるのです。人の救いになるのです。

 先日亡くなった立川談志師匠が「人間の業の肯定」という言葉をよく使っていました。いつでも正統派の古典落語をすることができるからこそ、その型から抜け出した、崩した落語が魅力だったのですが、「業の肯定」は、なんでもあり、好きなようにすればいい、という意味ではありません。

 自分の局部、きたないところ、よわいところを、しっかりと認めて生きなさい、という意味なのです。自分への自戒の念も込めて、私は自分にも言いきかせています。

 

事務局より

 

 先日、赤石先生の教え子の、藤野あすかさんが、タイのバンコクで仕事をしていることから、ACECバンコク支援会事務局長を務めていただきました。夫妻の来日の繁雑な手続きの多くを引き受けてくださいました。

 小岩在住の、同じく赤石先生の教え子の笠倉陽子さんも、藤野さんと友人であり、ニッタヤーさんから送られてくる、最新の活動状況データーをまとめたり、日本語に訳してくれる作業、データーのウイルスチェックを自主的に申し出ていただきました。

 同じく赤石ゼミの卒業生の河崎早弥加さんは、今回二週間のスケジュールすべてに添乗し、マネージャー兼カメラマンを務めていただいています。

 ACECの活動に寄り添っていただき、彼らのようなしばらしい人材が育ちつつあります。赤ひげ会の皆様、どうぞ今後とも、ACECアジアこども教育センターの活動に、ご支援をお願いいたします。

 ありがとうございました。

 ACEC荒川支援会 事務局長 五味正彦

 

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